この記事を見つけてくださり、ありがとうございます。
こんな人に読んでもらいたい。
部下隊員との関係構築に悩んでいる、初級幹部自衛官の皆さま。
教官から言われた言葉
「階級が明日無くなっても、付いて来てくれる部下隊員がいる。
そんな人間になれ!」
幹部候補生学校の教官から言われた言葉です。
部隊に赴任してすぐに、30名ほどの部下隊員を持つ初級幹部自衛官。
この30名の方々と、どう関係を作っていくか。私もとても悩みました。
幹部自衛官の評価基準
私は幹部自衛官になる前、陸士を2年間経験しました。初級幹部時代、この経験がとても生きたことを思い出します。
「この中隊長だったらどこまでも付いて行きたい!」
「この小隊長とは絶対に戦争に行きたくないなあ」
2年間、陸士として、色々な幹部自衛官と接し、色々な思いを抱きました。
そして、私の心の中で、幹部自衛官の評価基準が出来上がりました。
では、その評価基準とは何か?
「階級で人を判断しているか、していないか」です。
「陸士なんだから命令に従うのが当然だ」「自分は幹部なんだから偉いんだ」
直接言葉には出さなくても、嵩に懸かって命令したり、上から目線で接してくる方がいました。
表面上「はい」と返事はしていましたが、心の中では「ふざけんな!」と思っていました。
でも逆に、私を一個人として尊重してくれる方もいました。大勢いる陸士隊員としてではなく、一つの人格を持つ一人の人間として平等に接してくれる方です。
階級を抜きにした、人としての「平等」さがあるかないか。
これが唯一の評価基準でした。
考えてみれば、任務遂行上、誰が上で誰が下か、などというものは存在するのでしょうか。
確かに中隊や小隊に与えられる任務に対し、幹部自衛官は中心の役割を担います。
でもその中で動く構成員にも、それぞれ役割があります。陸士には陸士にしかできない役割があります。重い武器や通信機を持つ・寝ずに歩哨に立つ・沢山穴を掘る・伝令業務に励む等など。
それぞれがそれぞれの役割を果たすからこそ、任務達成が近づくのです。
この役割に上下関係はありません。それぞれが異なる役割を担う以上、それぞれが必要で大切な存在なのです。
一人ひとりが任務達成に向かう平等な一構成員。
命令権者である幹部自衛官が、この意識を持つと、一人ひとりの隊員に対する言動が変わってきます。
だから、自分が幹部候補生学校の学生となり、教官から言われた
「階級が明日無くなっても、付いて来てくれる部下隊員がいる。
そんな人間になれ!」
という言葉は、とてもしっくり来ました。
そして幹部自衛官となり、陸士時代を思い出し、階級を笠に着た言動だけは慎もうと心に誓いました。
初級幹部自衛官におすすめの行動
幹部自衛官という存在は、その立場上、色々な業務をこなす能力が求められます。戦闘集団のリーダーとして、戦術や戦史等の専門知識を学ぶ必要もあります。
でももっと大事なのは、その人からにじみ出てくる人柄です。能力がいくらあっても、部下隊員が動いてくれなければ、何の意味もないからです。
部下隊員は能力や階級を見るのではなく、「人」を見ます。
「この人は付いていくに値する人物なのか?」
逐次、目の前の指揮官を観察し、判断しています。
「この人の言うことなら、従おう!」「この人のためなら、やろう!」
そう思えた時、命を懸けてでも、その指揮官についていくのが自衛官です。
だから、現場で働く初級幹部自衛官は、幹部室でパソコンと向き合う時間よりも、部下隊員と一緒に過ごす時間をできる限りとることをお勧めします。
たまには、夏の暑い中、部下隊員と一緒に草刈りをする。
たまには、真冬の極寒の中で夜通し歩哨に立つ陸士の様子を見に行く。
たまには、営内班で、若い隊員と一緒にくだらない話しをして大笑いする。
たまには、隊員が掘った穴の中に入り、労いのことばを掛ける。
たまには、30名程の部下隊員の家族のこと・将来のこと・悩んでいることを一緒に考える。
こういう階級の境界を越えた行動が、部下隊員の心を揺さぶるのではないでしょうか。
これは階級を軽視しているのとは違います。
部下隊員は、むしろこういう行動をとれる幹部自衛官の階級を、とても大事にするものです。
その人に敬意を持つようになれば、その人の階級に自ずと敬意を表してくれるものです。
自分が本当に困った時や有事の際に、一緒に動いてくれる隊員となってくれるものです。
人を動かす上で大切なのは、強制力ではなく、人の心を動かすことではないでしょうか。
これからも、国防の最前線に立つ皆さんを陰ながら応援させていただきたいです。
まとめ
あなたに階級がなくなっても、付いて来てくれる部下隊員はいますか。
これからも、このブログをよろしくお願いいたします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
さあ、今日も元気だしていきましょう。
「元気があれば何でもできる!」
最後に幕末に祖国日本の在り方を憂い、指導者として、また人として志を貫いた吉田松陰の言葉を紹介して終わります。
~高い志とは~
いくら本を読んで知識を蓄えたところで、人はただそれだけでは、世のため人のため、何の役に立つこともできないまま、人生を終えてしまうでしょう。その人に「私は日本の道義を体を張ってでも守る」という高い志がなければ、いったん国に大事が起こった時、どうして迷わず正しい道を踏み、立派な功績を残すことができるでしょうか。
『新訳 留魂録~吉田松陰の死生観~』松浦光修著 PHP研究所
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